この人が語る 私の愛する画家 高村薫 私とマーク・ロスコ|日曜美術館
作家高村薫。「マークスの山」(直木賞受賞)「レディ・ジョーカー」などミステリ−の傑作で多くのファンを持つ。近年、大きく作風を変え「晴子情歌」「新リア王」などの作品では戦前戦後の何代にもわたる家族の物語を日本近現代史への深い洞察とともに描き、新境地を切り開いた。これまで美術について語ったことのない高村薫がアメリカ現代美術の巨匠マーク・ロスコ(1903〜1970)を語る。
亡命ユダヤ人だったロスコはニューヨークで画家の道を歩み始め、前衛的な仲間たちとシュルレアリスム風の絵画などさまざまな表現を模索していた。第二次大戦後、ロスコはついに 線も形も捨て去って色だけの絵画に到達する。巨大な画面に赤や褐色などの少数の色が塗られただけの「ロスコ・スタイル」と呼ばれる作品たち。一切の「意味」がはぎとられ、一目みただけでは「何だこれは」と言うしかない不思議な世界である。
高村の最新作「太陽を曳く馬」に登場する画家はみずからの住まいの壁を赤一色に塗り込める。そして彼はその作業の中で不可解な殺人を犯す。人はなぜ描き、なぜ殺すのか。難解で答えのない問いに挑む高村薫。
ロスコ晩年の「黒い絵」の前で「こんな小説が書きたい」と高村は語った。「何も意味せず、何かの図形でもない純粋抽象」であるロスコの絵画に寄せる高村の深い共感は作家としての創作のモチーフと重なってくる。「意味」から自由になること。
ではなぜロスコの「よくわからない」絵画に人々はひかれるのか。姜尚中はロスコの前で自我がなくなっていくという。
−7月19日放送分の再放送。高村薫氏の肉声を聞くのは初めてだったかもしれない。二作しか読んでいないが「いつか読める日が来る」と希望は捨てないでおこう。
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