yosi0605's blog

とりとめのない備忘録です

今さらだけど『アバター』

勝手ですが「下書き原稿解消週間」として、古い内容を吐き出していきたいと思います。第一弾は『アバター』です。え、今頃f^_^;





アカデミー賞の騒ぎがずいぶん昔のことのように思えますが、テレビも新聞も「煽り」が凄かったですね。そしてアカデミー賞の作品賞が『ハートロッカー』に決定した夜のNHK『クローズアップ現代』は『アバター』が作品賞を受賞することを確信して、その前提で制作していたのでしょう。他の話題に差し替えできなかったNHKの苦悩が伺える内容でした。


結局この『アバター』、劇場で二回見てしまいました。それだけの内容がありましたし、二回見たことで気になった点もある程度理解が進んだような気がします。


上映が始まって主人公ジェイクが惑星パンドラについてレクチャーを受ける場面で「あれ?」と思い、その思いはジェイクがアバターに同化してパンドラに降り立ってから巨大な野獣?に襲われて滝に飛び込み、難を逃れることで確信に変わったのです。「これは『ミッション』だ!」と。



ミッション HDニューマスター版 [DVD]

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『ミッション』 (The Mission) は1986年のイギリス映画(日本での公開は1987年)。1750年代、スペイン植民地下の南米・パラナ川上流域(現在のパラグアイ付近)を舞台に、先住民グアラニー族へのキリスト教布教に従事するイエズス会宣教師たちの生き様、彼らの理想と植民地社会の現実や政治権力者の思惑との葛藤を描く。(ウィキペディア

単純な置き換えですが、ジェイク及びナビィ側をジェレミー・アイアンズ演じるイエズス会神父とグアラニー族、海兵隊マインドあふれる大佐及びスカイピープル側がスペイン=ポルトガル連合軍に見えてしまいました。そうなるとミシェル・ロドリゲス役回りはデ・ニーロのそれということになるのか(カッコよかったですな)。最後に戦死してしまうところも連想を後押ししてくれる。ともかく、滝の場面以降は「どれくらい『ミッション』の内容とリンクするか」という視点で見てしまいました。


希少鉱物、資源を求めてフロンティアを拡大する歴史は産業革命以降の我々の歴史だと言えます。実際、南米で産出された銀がなければ産業革命はなかったと言われています。古い話ですが、『ミッション』が上映された後、竹下内閣の時、NHKスペシャル「立花隆の『思索紀行』」という番組で南米のインディオの部落を訪ねての部族長へのインタビューやストリートチルドレンの更生に尽力しながら子供たちと「ユートピア」建設を目指す神父の活動などが紹介されていた。ここで、なぜ竹下内閣と覚えているかというと、立花隆が当時週刊現代で連載していたコラム『同時代を撃つ』でインディオの部族長と竹下登総理(当時)を比較してリーダーの条件を論じていたから。結論として立花隆も撮影スタッフもインディオの部族長に日本の首相を務めてもらいたいとまとまった。残念ながらこの『同時代を撃つ』シリーズは現在は古本でしか読めないようだ。


ともあれ、経済原理、軍事最優先で動く大佐をはじめとしたスカイピープル側をかつての大航海時代植民地主義を経て現在に至る我々を含めた俗に言う「先進工業国」と見れば、監督が意図したかどうかは別として、映画は現在の世界おけるその傍若無人ぶりに対するアイロニーを含んでいることは間違いない。現在の世界が過去と違うのは資源を求めて軍事力を背景に動きまわる国が「白人」諸国だけでなくなったということか。


対するナビィ側。高度な精神性に支えられながらも結果武力闘争を選択する経過は『ミッション』でも先住民がデ・ニーロと一緒に戦う側、ジェレミー・アイアンズとともに無抵抗を選択する側とに分裂したように、どちらが正しくどちらが悪いと簡単に言えるものではないだろう。そして、現代に目を向ければ「今の世の中、安易な資源政策でチャベス大統領のような反米的政権に下手に手を出すと痛い目を見るよ」とのキャロン監督からホワイトハウスへのメッセージを含んでいると思うのは間違いなく考えすぎだろう(^o^;)ただ、資源国側から見れば、レアメタルを求めて動き回る日本もスカイピープルのように見られかねないことだけは肝に銘じておかねばならない。


さて、『ミッション』と『アバター』考えるために歴史的事実に目を向けるならば上記『思索紀行』でも取り上げられたラス・カサスについても勉強しなくてはいけないのだが、『アバター』を見て思い出すくらいなのだから当然手が回っていない。しかし、備忘録として取り上げるだけはしておきたい。「インディオは人間か」とはこの時代に真面目に議論された命題。



インディオは人間か (アンソロジー新世界の挑戦 (8))

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インディアスの破壊についての簡潔な報告 (岩波文庫)

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ラス=カサス (Century Books―人と思想)

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そして、『思索紀行』でインタビューした部族長の「コロンブスを殺せばよかったのだ」との言葉が、産業革命、ひいてはその後の歴史を全否定するものと慄然としたと立花隆が言っていたことを思い出したのでした(最近はピントのずれた発言が多くなってますが(^o^;))。


さてさて、その後国内メーカによる3Dテレビの生産・販売も始まったようですが、個人的にはどうでしょうねぇ、3Dは映画館だけでいいよってな気分なんですが、皆さんどうでしょう。